大阪高等裁判所 昭和28年(ネ)57号 判決
控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和二二年一二月二日附買収令書に基いてなした(1)吹田市字馬廻島四七〇一番の一土地九畝二五歩、(2)同所四七〇一番の二土地九畝二五歩、(3)同所四七一一番の二土地二畝二九歩、(4)同所四七一二番の二土地五畝二四歩、(5)同所四七〇六番の二土地一八歩に対する買収処分が無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」という判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、「本件(1)乃至(4)の土地のうち控訴人が建築した工場及び住宅の各焼跡の部分については、訴外森山好祐において、控訴人に対抗できる何等の権限がなく無断で耕作に使用していたものであるから同訴外人の小作地とはいえない。従つて右(1)乃至(4)の土地のうち少くともその部分についての買収処分は無効である。又本件(5)の土地は宅地であつて農地ではなく、しかも一時的に休閑地利用として訴外植田愛太郎に耕作使用させていたものであるから、同訴外人の小作地でもない。従つてかかる土地の買収処分は無効である。」と述べたほか、原判決の事実摘示と同じであるから、それを引用する(立証省略)。
三、理 由
先ず被控訴人の本案前の抗弁の理由がないことは、原判決の理由中でこの点につき説示しているとおりであるから、それを引用する。
次に本案について按ずるに、控訴人は、(一)、控訴人主張の(1)乃至(4)の各土地は、農地ではなく、宅地であるのに、これを農地として買収したのは無効であり、(二)、同(5)の土地は、訴外植田愛太郎が耕作しており、訴外森山好祐が耕作していなかつたのに、同人の買受申込に基いてこれを買収したのは無効であると主張するが右主張の理由がないことも原判決の理由中にくわしく説明しているとおりであつて、当審で提出援用した証拠によつても原判決のなした判断を左右することができないから、この点についても、原判決の理由をここに引用する。
なお、控訴人は、本件(1)乃至(4)の土地のうち、控訴人が建築した工場及び住宅の各焼跡の部分については、訴外森山好祐において控訴人に対抗できる何等の権限がなく無断で耕作に使用しているものであるから、同訴外人の小作地とはいえず、従つて右(1)乃至(4)の土地のうち、少くともこの部分についての買収処分は無効であると主張するけれども、原判決の理由中に認定しているとおり、訴外森山好祐は、元控訴人の使用人であつた関係上、昭和五年頃から右(1)乃至(4)の土地を控訴人から借り受けて耕作に使用し、控訴人において昭和一五年頃右土地の一部に工場及び住宅を建築した後も、右工場及び住宅の敷地以外の右土地の東側、南側及び西側で、右土地の総面積の二分の一余りの畑地を引きつづき耕作しており、右工場及び住宅が昭和一七年頃火災で全焼した後は、控訴人において建物を再建する様子もなく又右建物建築前は控訴人から進んで本件土地の使用を許したいきさつもあつたので、同訴外人は改めて控訴人と焼跡土地使用に関する契約をすることもなく、これを再び開こんして耕作していたものであり、なお原審証人森山好祐の証言によると、右焼跡開こんの際控訴人から別段苦情を受けなかつた事実をうかがうことができるのであつて、右のような事情の下に土地を耕作している場合に、焼跡を含む右土地を右訴外人の小作と認めて買収処分をしても、必ずしも明白なかしのある行政処分と断ずることができないと解する。
次に、控訴人は、控訴人主張の(5)の土地は宅地であつて農地ではなく、しかも一時的に休閑地利用として訴外植田愛太郎に耕作使用させていたものであるから、同訴外人の小作地ではなく、従つてかかる土地の買収処分は無効であると主張するけれども、甲第二号証中のこの点に関する記載は信用できないし、他に控訴人主張事実を認めるに足りる証拠がなく、却つて、原審証人植田愛太郎、同細川兼繁の各証言並びに原審における控訴人本人訊問の結果を綜合すると、右(5)の土地は、控訴人が昭和二年頃これを他より買い受けたものであるが、訴外植田愛太郎においてその頃控訴人からこれを無償で借り受け、爾来長年月に亘つて、右土地に接続する自己の所有地六十坪と共にこれを耕作に使用してきたものであることを認めるに充分であるから、右土地は農地であつてしかも同訴外人の小作地であると解するのが相当である。従つて、右土地の買収処分につき控訴人主張のようなかしがあるとはいえない。
以上によつて、本件買収処分を無効とする控訴人の本訴請求は失当であつて、これを棄却した原判決は相当であると認め、本件控訴を棄却することとし、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決をする。
(裁判官 林平八郎 竹中義郎 入江菊之助)